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掲載日:2006年11月01日 |

「市場化テスト」 というのは一般には耳慣れない言葉だが最近色々な場面で出てくる。
本年5月に成立し7月7日から施行されている 「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」 いわゆる 公共サービス改革法(市場化テスト法) によって官民による競争入札を行い、一定の公共サービスの担い手を決める仕組みのことを言う。政府は第一弾として当面国民年金の保険料徴収や管理職経験者の再就職支援など5分野9事業を対象として入札を行い、来年4月から事業を移行する予定だ。さらに来夏を目処に約20業務に対象を拡大する方針と報じられている。国民への公共サービスの一部を官民が競い合って供給する体制がいよいよスタートするわけだ。
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9月5日に閣議決定した政府の基本方針では、事業落札企業が下請けに一括して再委託する「丸投げ」は禁止し、民間が落札した事業に携わっていた国家公務員は他の業務に配置転換する等の雇用対策を講じるとしている。さらに法律上は義務付けられていないが、地方公共団体にも市場化テストの導入を促して、いわゆる「お役所仕事」全般に民間企業との競争原理を導入することにより、サービスの質の向上や事業の効率化を進めようとしている。これらの試みが奏功すれば公共サービス全般にわたって画期的な影響をもたらす可能性がある取り組みだ。

そもそも公共分野に民間の活力を導入して効率化を図ろうという試みは古くからなされてきた。昭和61年のいわゆる民活法を皮切りに同様の手法を用いた地域開発的立法が多く制定されたが、それらはほとんど「施設」に着目した手法でいわば点に民間の資金とノウハウを導入しようという発想にとどまっていた。
しかしそれらは最近のPFI制度の導入、構造改革特区等の取り組みにつながっており、いわば点から面に対象を広げる誘導効果をもたらした。旧国鉄、電電公社等の分割民営化もこのような流れのなかで断行され、最近の道路公団、そして郵政民営化へと連なっている。その間地方行政においても地方自治法で指定管理者制度を導入して公共施設管理への民間参入の道を整えた。
このようにさまざまな方策で民間活力の導入が図られてきたわけであるが、これらに共通して言えるのは、民間部門の優れた機動性、効率性は認めつつも、あくまでも民間部門は公共サービス分野でのサポート役に過ぎず、決して主役ではないという前提に立っていたという点ではなかろうか。これに対して今回の仕組みは主役そのものを代えうるというドラスティックな面がある。官民が優劣と効率を競って優秀でかつ効率的なほうがサービス供給すればいい。ひとつひとつの業務単位でキャスティングにまで踏み込んで抜本的に改革しようというものだ。公共サービスの受け手である納税者の立場からみても納得のいくシステムである。

前述の民活法等の各種制度による取り組みは公共分野に民間の能力と資金を導入していくうえで全体として貴重な試みであったと評価できようが、残念ながら公共分野全体の体質変革をもたらすほどのインパクトはもたらしてこなかったと言わざるを得ない。原因は制度が複雑すぎて期待されたほど民間の需要を喚起できなかったり、対象分野・地域が限定され過ぎていたり様々であるが、その背景には制度設計をした霞ヶ関官僚組織の自己保存本能が大きく横たわっているように思える。逆に言えば長年にわたって官は民が競争に参入しうる分野にまで対象業務を無限定にかつ独占的に拡大してきたということだ。
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今回の市場化テスト法による公共サービス分野への官民競争の導入が今までの取り組みと一番異なる点は、官による独占的供給が当然と思われていた分野に民が入りうる可能性が開かれたということだろう。官はこれからは民との競争に打ち勝っていかなければ業務そのものを失う。当然のことだが業務がなければ組織も人員も予算も要らない。問題はこれからどの程度の分野をこの制度の対象としていくかだ。権力的な行政を除いてかなりの業務が潜在的には対象となりうると考えられる。これを機に官は本来の姿に立ち返り、真に官しか供給できない公共性の高い行政分野の遂行に専念すべきなのだ。

市場化テスト導入がどの程度のインパクトをもって各般の行政サービスの抜本的体質変革をもたらすかはひとえに対象業務をどういう範囲にするかにかかっている。対象を限定的にしてしまえばその影響は今までの各制度とさほど変わらないレベルにとどめ得る。いわば政策当局のさじ加減如何によるわけだ。
公共サービス全体から特定の業務だけを抜き出して対象としていく現行法の仕組みにはおのずから限界がある。将来この仕組みが定着して国民住民の積極的支持が得られる効果を生むようになれば、原則と例外を逆転させて特定の極めて公共性の高い分野以外はすべて市場化テストのフィルターを通らなければならない仕組みも十分に展望しうる。
そういう意味で全庁的に2027もの業務を対象にしようとする佐賀県の取り組みは大変注目に値する。法律では特に義務付けられていない分野も積極的に官民競争の導入が検討されている。地方における先行的な対象分野拡大の動きが今後国の各省庁の行政分野に影響していくことも十分考えられる。我々は今後国と各地方の取り組みを不断にウォッチしていかなければならない。国と地方は国民住民のために鋭意政策遂行能力を駆使して競争をすべきなのだ。将来地方が国に取って代わることもあるかも知れない。官民競争のみならず国地方競争も新しい局面に入ったと言える。












































