 
掲載日:平成19年11月20日


民間部門での不祥事は連日報道され、我々は何があってもさほど驚かなくなってしまったが、本来最も高いレベルでのコンプライアンス(法令遵守)が求められている公務員の世界でも本質的に同様の事態が起こっている。こうした事態を受けて10月29日、総務省が「地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会」を発足することを発表した。「地方分権改革の推進にあたって、地方公共団体においては、自らの行財政運営について透明性を高め、行政を取り巻く様々なリスクに対し自律的に対応可能な体制を整備することが望まれる」として、民間部門における会計監査制度の充実や企業の内部統制の強化に係る取り組みを参考にしつつ有識者により幅広く検討するという。


翌30日に行われた第一回研究会においては保険料や地方税など公的債権の徴収ミス、不適正な会計処理、行政情報の流出などの事案が紹介され、組織、制度上の問題点、運用上の問題点、職員の資質の欠如など背景となっていると思われる事情が様々な角度から分析された。同研究会は今後月1回程度の開催を予定しており、来年3月をめどに報告書を取りまとめる方針だという。民間企業においてコンプライアンスが問題とされ、内部統制が重要課題としてとりあげられ始めたのが比較的最近であり、およそ役所とは無縁のこととみなされてきた傾向があることを考えるとまさに隔世の感がある。本来営利概念がなく営利追求とのバッティング要素が希薄な公共部門において何故ここまでの問題が起こっているのか、なんらかの構造的システム的欠陥があるのか、きびしく検証されなければならない。


明治以来の近代化過程において国、地方の役所を中枢とする公的部門が社会全体をリードし、ある意味国民の模範ともなってきたのは事実だ。明治以来戦前まで富国強兵をめざして突き進んだ時代も、終戦後戦災復興からひたすら経済発展をめざした時代もこの点はあまり変わりないような気がする。この間「役所に任せておけば間違いない」という国民の公共部門に対する信頼感と、その裏返しともいうべき依存心が自然と醸成され強固なものになっていった。一方役所も長い間その信頼に応えるべく営々と近代国家形成に努力してきたが、その手法は民主主義による智恵の集積というより官僚組織による独断専行の要素が強かったと言わざるを得ない。国民はただひたすら役所を信じるしかない立場に置かれ続けてきたのだ。これ以上独断専行を放置してはならない。


明治以来百年以上かけて<魔法のように>築かれてきた役所と国民の関係は大きく変容しようとしている。直接の原因は国民からの「信頼」という役所最大の資産が大きく崩れ去ってしまったことだ。誰でも相手が信頼できないのであれば簡単に任せるわけにはいかない。考えてみれば当然だが役人も役所の組織も普通の人間かその集合体だから、民間部門と比較して体質に根本的な差があるはずはない。ここしばらく国民はいやと言うほどこの「当然の理」を痛感させられてきた。別途ご紹介している日本版SOX法等民間部門の内部統制関係諸制度は、根本的に人も組織も放っておけば怠惰になり悪をもなしうるという前提に立っている。役所は失った信頼を回復すべくあらゆる努力をすべきであるが、我々国民は<百年の魔法>から醒めて直ちに安易な役所依存心を捨て、公共部門を自らの眼で捉えて考え、可能な限り自ら実践参画するように努めなければならない。これからの百年は国民自らのリーダーシップで切り開いていくしかない。民主主義の健全な進展如何がその成否を根本的に左右するのだ。


Page : 1 / 1
|