法令遵守(コンプライアンス)は役所に学べ 法令遵守(コンプライアンス)は役所に学べ
 シリーズ第一弾として国、地方公共団体の意志決定システムの中核をなす議会及び選挙制度と株式会社の最高意志決定システムである株主総会の仕組みを比較検討する。両方とも「民主主義」という理念のもとに構築されている制度であるが、その内容は驚くほど異なることにお気づきいただけるであろう。


まず第一に有権者の要件と権限である。株式会社の株主は株を所有している=すなわちある事業目的を共有している人たちの集団であるから、すべての住民が自己の意思にほとんどかかわりなく当然に属することになる公共団体とは異なる。後者では一定の年齢に達するなどの事実に着目して「自動的に」有権者となるが、前者では株の取得という積極的能動的行為が必要である。
それに加えて重要な違いは、後者ではすべての有権者は基本的に(形式的に)平等であるという前提で選挙制度が構築されているが、前者では「一株の平等」すなわち金銭的な意味での実質的な平等が前提になっており、株主は持ち株数に比例した権限があるというのが基本になっている点である。


 この点はよく国際機関の意思決定システムの違いと対比される。国際機関は独立した「国」の集まりであるから、国連(特に総会)のように大国小国を問わず一国一票を原則としているところが多い。このようないわば形式的平等主義は国際機関が重要な働きをしようとすればするほど、現実の力関係とのギャップを生む。国連ではそれを補完するために安全保障理事会の制度があり、連邦国家を指向するEUでは、加盟各国の人口その他各種の「実態」が意思決定システムのなかに反映している。このような観点からみるとIMFなど金融系国際機関のしくみは「出資比率」という金銭的数値を議決権の基礎としており、「実態」をシンプルに反映しているといえる。株主総会の制度はいわば究極の実質的平等主義を指向したものなのだ。


 次に指摘したいのは、議会側の権限である。この問題はすなわち「委任の度合い」の問題でもある。双方とも大衆的民主主義の欠陥を最小限にするため、意思決定のうちかなりの部分が執行部(行政当局、取締役会など)に委任されている。公共団体においては権力の分立として語られ、株式会社においては所有と経営の分離として捉えられている事柄である。仔細に検討すると、議院内閣制をとっている国の国会の場合は法律、予算など国の活動の全般にわたって強い権限があることは当然であるが、この傾向はいわゆる大統領制的な制度である地方自治の仕組みにも色濃く反映している。地方議会の権限も国会に準じてかなり広範かつ強力なものなのだ。これらに比較すると株式会社の場合株主総会の権限はかなり限定されており、執行部委任の要素が大きい。

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